【コラム】事業を始めたいけど個人事業主と法人どちらが良い?~違いとメリット・デメリット~

2021年12月6日

会社員だけの給与では少ない、もっと稼ぎたいという方が増え、会社以外での仕事に取り組む人が年々増加しています。副業、複業、パラレルキャリアといった言葉が誕生し、会社によっては社内個人事業主といった制度を取り入れるなど、本格的に副業が世間に認知されてきています。

この記事では、「個人事業主と法人の違いやそのメリット・デメリット」についてそれぞれ解説していきたいと思います。

~事業とは~

まず抑えておきたい部分としては、事業を行うにあたって継続・反復・独立をしている事が事業として認められます。事業としての大分類は以下の通り。

農業,林業/漁業/鉱業,採石業,砂利採取業/建設業/製造業/電気・ガス・熱供給・水道/情報通信業/運輸業,郵便業/卸売業・小売業/金融業・保険業/不動産業,物品賃貸業/学術研究,専門・技術サービス業/宿泊業,飲食サービス業/生活関連サービス業,娯楽業/教育,学習支援業/医療,福祉/複合サービス事業/サービス業(他に分類されないもの)/公務(他に分類されるものを除く)/分類不能の産業

これらの中から、事業として継続・反復・独立出来るものの届出をする必要があります。

しかし、ビジネスを始めるにあたって何が売れて何が継続できるかなんて分からないと思います。今や大企業となった会社でも起業当初と同じ事業をしている会社もあれば全く違う事業をしている会社もあるので、分からないものですよね。

~個人事業主とは~

個人事業主とは、その名の通り個人で事業を営む者の事。
個人事業主になる方法は簡単で、税務署に開業届を提出すれば個人事業主として活動を行う事が出来ます。

<主なメリット>
・手続きが簡単
 個人事業主は開業届を税務署に提出するだけ、費用もかからない事から法人の設立に比べると圧倒的にコスト面でもメリットがあります。

・何をするにも自分次第
 これはメリットでもありデメリットにもなり得るのですが、働く場所、時間、人間関係、全て自分次第で決める事が出来ます。所得も全て自分次第になるので、向き不向きが分かれるところになります。

<主なデメリット>
・税金面
 個人事業主として仕事をして得た事業所得は、個人所得としてみなされ個人としての所得税が課せられます。税率は7段階(5%~45%)に分類され、住民税などと合わせると最大で所得に対して55%もの数字になります。事業所得が低いうち(一概には言えませんが目安500万円以下)は、個人事業主としてビジネスを行った方が税率は安くなりますが、継続的にそれ以上の事業所得を得られそうであれば法人化した方が節税になると言えます。

 ※法人化の目安金額は事業所得のみで一概に判断できないため、あくまで参考程度の金額になります。

・社会的信用
 ビジネスは信頼と信用の積み重ねと言っても過言ではありません。法人でも認知されていない企業はたくさんありますが、それが個人事業となると更に認知が低くなってしまう現実があります。

~法人とは~

法人とひとことで言っても種類があり、営利法人・非営利法人・公的法人が存在します。
ほとんどの人が営利目的でビジネスを行うと思いますので、営利を目的とした法人に絞れば株式会社・合同会社・合資会社・合名会社がそれにあたり、それぞれ会社法で規定されています。

<主なメリット>
・社会的信用
 法人化をする事で社会的な信用を得られやすくなります。法人と言えば株式会社が真っ先に思い浮かびますが、株式会社という肩書きを付けると金融機関からの融資が受けやすくなります。また、企業によっては取引条件を法人に限定している場合も多々あり、このあたりも個人事業主との大きな違いに挙げられます。

・税制上の観点
 経営者の所得が高くなればなるほど所得税率が上がり、その割合は最大で45%で更に住民税10%を加えた55%になる事も。これが法人になると最大でも30%台での税負担となる為、法人化の大きいメリットとして挙げられます。

<主なデメリット>
・会社設立にあたり費用と手間がかかる
 法人を設立する際は、定款認証手数料や登録免許税などが必要になります。これらの事を自分で出来れば良いのですが、外部に委託などをするとその分の費用も発生します。定款とは会社によって定められたルールで、定款に基づいて会社を運営していく書類です。この定款を定めて公証役場で認証を受けてから、法務省で法人設立の登記をする必要があります。

・社会保険加入が義務
 法人化をすると人数に関わらず社会保険への加入が義務付けられます。社会保険は会社と従業員で社会保険料を折半するため、その分の人件費が上がってしまう事がデメリットのひとつです。

~個人事業主と法人どちらが良いの?~

個人事業主と法人について、メリット・デメリットと書いてきましたが、どちらが良いのかと言われると所得による。というのが一旦の答えとなりそうです。
継続的に一定以上(一概には言えませんが目安700万程度)の事業所得が得られるのであれば、法人化をした方がメリットがあると言えますが、法人化するには手間と費用がかかりますし、事業を継続出来なくなってしまった場合は個人事業主の方が後々も楽です。まずは個人事業主としてスモールスタートを切るというやり方も良いかもしれません。

※法人化の目安金額は事業所得のみで一概に判断できないため、あくまで参考程度の金額になります。

【関連リンク】
「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」(国税庁HP)
「個人が新たに事業を始めたときの届出など」(国税庁HP)